SmartHR社でアクセシビリティの技術顧問

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この記事はSmartHR Advent Calendar 2020の6日目の記事です。

2020年4月から副業でSmartHR社のプロダクトデザイングループにてアクセシビリティの技術顧問を始めて半年と少しが経った。あまり周りでもウェブアクセシビリティの技術顧問が何をしているか聞かないので振り返りも含めて書いてみようと思う。

実際にSmartHR社がどういう取り組みをしているかは12/16(水)に@uknmrさんが紹介する予定。


技術顧問になった経緯は、元々知人であった@uknmrさんからアクセシビリティをやっていく土台を一緒に作りませんかとお誘いされ、現在の勤務先でも同様の業務をしていて経験が活かせそうということと、勤務先では経験しにくいtoB対象のSaaSにおけるアクセシビリティ推進が経験できるということもあり二つ返事で快諾した。

SmartHRは社会の非合理をハックするというミッションを掲げ、クラウド人事労務ソフトウェアを企業向けに提供している。導入企業一覧を見ても分かる通り、大企業へも多く導入されている。

大企業で利用されるということは、より多様な利用者が使用するためアクセシビリティも一定の品質が求められるだろう。プロダクトやサービス、ないしはコミュニケーション全体のアクセシビリティが低いことによる機会損失を減らす、そのための文化とシステムづくりを支援するというのが主な業務である。

具体的な業務

具体的にやっていることは次の通り。

  • アクセシビリティ向上の計画立案支援
  • 知識・スキル獲得の支援
  • コードレビュー、SmartHR UIへのコントリビュート

アクセシビリティ向上の計画立案支援

主に週に1度、@uknmrさんと1on1をして最近どうよ、次はどういう施策をしよう、この施策は上手く行った行ってない、などの話をしている。その他、よく雑談もしている。

取り組みの詳細は@uknmrさんに譲るが、

  • 全社対象のアクセシビリティ勉強会開催
  • ミッションとアクセシビリティの関係の整理
  • ウェブアクセシビリティ対応方針の策定
  • 方針に準じた試験の計画、実施、改善

などが行っている主な施策である。

個人的には技術顧問はいつか必要でなくなる方が健全だと思っているので、意思決定のための必要なサポートや施策のアイデア出しなどサポートに回っている(つもり)。本来サポート役が苦手で自分で進めてしまう側なので個人的にも良い経験になっていると思う。

また1on1だけでなく随時Slack上で質問に答えたり、関連ニュースを流すbotになっていたりする。

知識・スキル獲得の支援

他にはフロントエンドの開発メンバーを中心に週に一度開催されている WAI-ARIA Authoring Practices 輪読会などの勉強会に参加している。勤務先でもデザイニングウェブアクセシビリティの輪読会を行ったりしているが、やはり一人知識を持った人間がいるほうが効率が良いと感じている。

輪読会中に出た疑問をその場で解決できると議論が進みやすいし、具体例やユースケースをその場で知ることができれば理解も深まる。また仮に間違って理解していたとしても、間違った理解を全員に広げてしまうことを防ぐことができる。

アクセシビリティは体系的に学ぶ方法が普及しているわけではないので(それはそれで業界の課題としてあるが)、やりたいけれど何からやってよいのかわからないに陥りがちなところがある。そういうフェーズでは例えばチャットでいつでも質問に答えますよーではなかなか質問も出てこないため、このような勉強会の支援が取っ掛かりとしては良いように思う。

コードレビュー、SmartHR UIへのコントリビュート

またプロダクト共通のUIライブラリであるSmartHR UIへも少しコミットしている。おもにアクセシビリティ観点でのレビューやissue作成、スクリーンリーダーなどの支援技術での検証、ほんの少しだけど実装もしている。

SmartHR UIにはReactが使われていて自分の経験も活かせるし、OSSで公開されているので参画もしやすく助かっている。

技術顧問をやってみて

技術顧問として、本業ではない組織で仕事をしてよかったと思う点は課題解決の試行回数が増えることだ。試行回数が増えれば、自身が行ってきたことが組織に依存しない汎用的な解決策なのかそれとも組織に依存したものなのかとか、解決に必要な要因の整理がしやすくなる。

事業会社にいるとクライアントワークほど試行回数が増えないのでこういう機会はありがたい。それにこれまでの経験を活かすだけでなく、SmartHR社での経験を本業に還元することもできる。

また素直にアクセシビリティやっていきの仲間が増えることも嬉しい限り。エンジニア・デザイナーだけでなくさまざまな方もやっていきなので、これから色々と良い事例をアウトプットしていけると思う。まずは12/16(水)の @uknmr さんの記事をお楽しみに。


明日はKANZAKI Takumiさんです。